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第 16 回 外国人従業員さんに成り代わってのお話

2019.08.27

 今や日本社会は、外国人労働者によって支えられています。飲食業界もご多分に漏れず、その傾向は顕著です。この状況を受け外国人向け飲食専門求人情報サイトも生まれ、求人・求職の利便性は増してきました。しかし制度やサポートにも改善が見られるものの、現場での諸問題は、一筋縄ではゆかないのが現状です。

 原因は、文化や習慣の違いや日本語でのコミュニケーション不足が最も多く、受け入れる店側にも、努力と工夫とが求められます。
 『 日本で生活するのだから、もっと日本語を勉強しろ 』という声もあります。しかし目の前の外国人従業員さんに、それを言っても始まりません。先ず店側から、会社にとって最も重要な信条・方針・考え方を、従業員さんの言語で書いてご用意いただきたいと思います。そしてその文書を使い、何の為に私達が店内にいるのか、何故そうしなければならないのかを、相手によっては噛んで含めるように、優しく説明なさることを提案申し上げます。
外国語での種々マニュアルも、その人の日本語能力によっては必要です。
何故ならば、外国人従業員さんに良い仕事を望む訳ですから、店側も彼らに、良い受け入れ準備をする必要があるからです。人や国柄によっては、ホスピタリティーやサービス精神など、重視しないケースもあります。衛生観念も同様です。
懇切丁寧な説明が実を結び、彼等を単なる労働力ではなく『 仲間 』と考えていることを知れば、私達の要望は、しっかり受け入れてくれます。

 この外国語の文章は、日本語の達者な外国人従業員さんがおられたなら、その方に頼む方法がベストです。一緒に翻訳作業をすることで、その従業員さんは仕事への理解が一層深まり、私達との親密さも増すからです。勿論のことですがこの協力に対しては、有形無形の報奨が必要です。
もしそのような従業員さんがいなくても、仕事として翻訳してくれるところは増えました。各国大使館でも事情を上手に説明すれば、良い事業者を斡旋してくれます。

 次にお客さんへの常用文言を、正しい発音で感情を込めて言えるよう、オウム返しで練習してもらうことが大切です。これは『 いらっしゃいませ 』が『 本当によく来てくれましたね~!! 』と聞こえるように、『 有難うございました 』が『 来ていただいて、嬉しかったですよ!是非また来てくださいね!!! 』と聞こえるまで行っていただきたいと思います。笑顔でこの取り組みを繰り返すうちに、お互いの心の壁が無くなり、必ず打ち解けてくれるようになります。因みにここで言う笑顔は、外国人従業員さんに求める前に、こちらから投げ掛けることが肝要です。 

 そして外国人と接する際は、先ず拒否反応を取り払い、国籍でタイプを決めつけず、一人ひとり個人として見てあげることが重要です。よく、『 日本人は、、、 』と口にする人がいます。しかし個々の日本人の個性も精神的傾向も、一様ではありません。外国人も、同じです。
ただし良い仕事をしてもらうため何かお願いするときは、テクニックとして、『 お客さんは君個人の仕事としては見ないで、〇〇人はダメだという風に考えるよ 』という意識の促し方も必要です。

 長い間には、意見の食い違いもあることでしょう。難しい問題も、持ち上がるかと思います。
その場合にはじっくりと、話し合いをなさるようお願いいたします。良いお店が長い時間をかけて出来上がってゆくように、外国人従業員さんとの良い人間関係構築にも、長い時間と試行錯誤が必要です。
 『 外国人は、どうしてこうも違うんだろう 』と言う人がいますが、『 違いの有るのが当たり前 』というところから出発し、共通点と長所を見てあげることをお勧めいたします。そして改善して欲しい点は明瞭かつにこやかに指摘し、良化したら必ず褒め、感謝しつつ見守ってあげることもお願いいたします。お互いに多様性を認め合い尊重し合うことで、口幅ったい申し上げようですが、国際親善に貢献することになります。また、職場を離れても外国人の友人がいるということは、人生にとっても有難いことであります。故郷のことも家族のことも、是非聴いてあげていただきたいと思います。

 日本は古来より、外国の学問や文化を学びながら、国の新生を繰り返してきました。
外国人従業員さんからも、彼等ならではの感性や精神文化や技術など、豊かな何かを学んでいただきたいとも思います。

 飲食業界を始め社会の現実に目を向けると、生産年齢人口の減少による労働力不足は、外国人の助け無しには解消されません。
 また東京オリンピック・パラリンピックに向け、外国人観光客が飲食客として、皆様のお店に見える機会も増えてゆきます。その様な時に外国人従業員さんは、お店と訪日客との橋渡しもしてくれます。
 
 外国人従業員さんを私達の『 仲間 』として迎え入れることは、社会にとっても飲食業界にとっても実に大きなメリットなのです。

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