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第 15 回 内部顧客ロイヤルティが、人手不足を解消!!!

2019.08.11

 かつて『 お客様は神様です 』と宣い一世を風靡した、三波春夫さんという国民的人気歌手がおられました。当時このフレーズは、大変な流行語にもなりました。三波さんは実直な人物でしたから、その三波流の常套句は、心から出たものだったと思います。
 一方で三波さんとは別な動機で、昔から商人達の、決まり文句でもありました。
 
 飲食店にとってもお客さんは、全ての経費を賄い、収益までもたらしてくださいます。
そしてその収益の源泉は、お客さんからの愛着度と来店頻度です。従って顧客エンゲージメント( お客さんとの心の絆や信頼関係 )を誠心誠意追及する度合が、飲食店経営の成否を分けることになります。
 
 全てのサービス業の基本は、『 大切な人に接する如くお客さんに寄り添う 』ことでありましょう。しかしこれは、人と交わる際の原理原則でもあります。この心性に共振してくださったお客さんは固定客となり、長期にわたる、計り知れない貢献をしてくださいます。ご自身によるご愛顧にとどまらず、自発的に宣伝活動までしてくださるからです。
お客様は神様ですと言わなくても、料理と接客とに充分なホスピタリティーを発揮しさえすれば、掘り尽くせない宝の山を獲得できるのです。

 これと全く同様で、従業員さん一人一人に関心を寄せることが、確実に高収益へとつながります。
温かく見守られ、人格を認められた従業員さんは、職場への帰属意識が増してゆくからです。
帰属意識の高い従業員さんは、お客さんを幸せにする店作りを、自ら進んで考えてくれるようになります。そればかりか離職者までが休日に、欠員のできたシフトに入ってくれるようにもなるのです。

 もちろんのこと帰属意識を高める為には、職場の良き雰囲気作りは欠かせません。しかしそれだけに止まらず、メニューやサービスの内容など従業員さんから建設的提言があった場合、充分に話を聴いた上で、そのアイディアを採用することも重要です。これが慣習として定着すると、それまで従業員さんにとって『 単なる職場 』でしかなかった場所が、『 私の店 』へと、認識の変化が起きるからです。
その他にも、従業員さんのお陰で増えた利益を積極還元するなど、できることは多々あります。
 
 目標を設定し、そこを目指すと宣言するだけでも、効果が期待できます。
先ずメッセージを周知し、可能なことから始めるようお勧めいたします。一連の改善が実を結んでゆくと、職場への愛着や職業愛も醸成されてゆきます。そして究極には従業員さん達の心情が、忠誠心へと向かってゆくのです。この様な自発的忠誠心こそが、『 真の従業員ロイヤルティ 』と呼べるものではないでしょうか。

 私は以上の理由から、事業では従業員さんをお客さん( 外部顧客 )と同等の『 内部顧客 』と認識し、寄り添うことが肝要と考えます。通常のお客さんと内部顧客とは、高収益継続営業にとって、不可欠の両輪だからです。これは人手不足だからと言って、従業員さんに媚びることとは違います。根底には、人を幸福にすることは人生と事業の目的の一つで、そこにお客さんも従業員さんも隔たりは無いとの考え方があるからです。そして更にもう一つ、従業員さんを幸せにすることが、結果的にお客さんを幸せにするとの確信があります。人は幸せになると周囲への優しさや心遣いが増し、その心持はお客さんにも向かうからです。

 更には、大切にされ幸せな気持ちで働ける従業員さん達は、お互いに一段と協力し合うようになります。そして結果として、幸福感を与え合うことになるのです。
人間関係が原因で離職するケースが多いことを思うと、助け合い認め合う仲間がいる職場は、どれほど居心地が良いことでしょうか。また、協力し合うことで増えた利益が給与・処遇の向上につながりますから、従業員さん同士も、お互いにとっての内部顧客である訳です。殺伐とした社会の中で、嬉々として働ける職場があるなど、オアシスに出勤するようなものです。仲良し従業員さん達が明るく活き活き仕事ができることで、必然的に生産性向上へもつながってゆきます。
事業におけるソフトの部分を極言すれば、『 生産性とは元気だ 』と確信いたします。

 以上と同様で何が事業を成り立たせているかを考えると、出入り業者さんもまた心を寄せるべき存在です。つまり事業にとっては従業員さんも業者さんも、全ては大切にすべき内部顧客なのです。

 さて、自らの職場に不満足な人は、全体の約6割に上るとの報告も有ります。その人達は友人・知人が好ましい職場で働いていることを知ると、決して無関心ではいられません。
現在の労働市場は売り手優位ですから、その人達の多くは転職を考えています。そして楽しそうにしている友人・知人を見ると、『 君の会社はどう? 』と声を掛けたくなるのです。

 システムや制度として、『 リファラル採用 』を取り入れている会社もあります。
しかしリファラル採用という言葉など無い時代から、友人・知人の『 つて 』による転職はありました。何れにせよ、声を掛けられた人物が自分の職場に満足していたら、会社の自慢話をするでしょう。こうなれば話は進み、転職の口利きをするに至るのです。反対に、自社に好感を持たない人の多い会社がリファラル採用をしても、誰かが『 実はこの会社はね 』と陰口を叩けば、全てはぶち壊しになってしまいます。そればかりか不満に付け入り、引き抜きさえ起きることになります。

 お客さん方に対し後ろめたさの無い企業体質も、ことのほか重要です。自分の仕事に誇りが持てないなど、これほど悲しいことはありません。もし自分の会社や仕事に誇りが持てたなら、それは高額給与にも匹敵します。
また単なる労働力としか認識されない従業員さんは、例え少しばかり給料が高くても、会社への帰属意識を持つことはありません。
 
 雇用関係は、どこか恋愛関係と似ています。幸福な男性も女性も誰かに恋人の自慢話をしたくなり、反対の場合には、どこかにはけ口を求めたくなるのです。
社会問題になった『 バイトテロ 』など、この事実と無関係ではありません。

 前述のように従業員さんを『 内部顧客 』と考えあらゆる改善を試みることで、得られるメリットは計り知れません。その最たるものは人が人を呼ぶことで、離職者を含めたスタッフさんからの紹介のみならず、お客さんや業者さんの中からさえ、就職希望者が出てきます。従業員さん達が、大切にされている実態が判るからです。
 そして『 つて 』による採用が決まったら、功労従業員さんには、報償を出していただきたいと思います。人財採用に貢献した社員さんへの報償など、高額の求人費や人材派遣会社への出費を考えれば、微々たるものです。目の前にニンジンをぶら下げるやり方は好ましくありませんが、ケースバイケースで熟考すれば、結果はきっと上手くゆきます。

 ある意味で事業にとっての従業員さんは、お客さん以上に重要な存在と言えます。人手不足による、廃業の事例さえ有る時代だからです。しかし今後ますます顕著になる人手不足も、人を引き寄せる職場ならどこ吹く風です。内部顧客を大切にする会社では、離職率の低下も目に見える形で現れます。

 人の心や社会環境は、日々変化してゆきます。生産年齢人口が減少してゆく中、若者の心をリサーチするなど、事業の在り方も進化させるべきと考えます。そしてこの取り組みは一度きりで終わりにするのではなく、継続・更新してゆくべきとご提案申し上げます。

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