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第 12 回 飲食店経営コンサルタント、『 飲食店ドクター 』としての私の仕事 (1)

2018.12.14

 『 お客さんにとっても従業員さんにとっても最高の飲食店を作りたい 』と願う経営者さんに巡り合うと、心から敬愛の念を覚えます。その想いは美しいばかりではなく、これこそが、高収益継続営業にとっての『 魔法の杖 』だからです。テクノロジーもシステムも、この理念実現の為にあると思い至ることができれば、飲食店経営は盤石なものとなってゆきます。
 
 飲食店営業は事業ですから、あらゆる対策を講じ、高収益を長期間安定的に挙げ続けなければなりません。こう考えると飲食店経営は、長い日数を走り続けるウルトラマラソンに例えることができます。しかも飲食店経営は何年・何十年と継続する訳ですから、延々と走る為にはゴールまで、健全な心身を保ち続けることが肝要となってきます。
 つまり飲食店に限らず事業では、無駄を排しお客さんを増やす為の努力を重ねながら、職業倫理的に後ろめたいことが無いか? 無謀な運営をしていないか? など健全経営維持の為、チェックを怠ってはならないのです。
 
 そしてもう一点、心すべきは一着に執着し爆走するのではなく、『 完走することが勝つこと 』との立場に立つことです。闇雲ランナーの脱落を尻目に皆様のお店は高収益を挙げ続け、気が付けば、優勝していることさえあるからです。
 
 延々と続く『 ウルトラマラソン( 飲食店営業 ) 』は、平坦・安穏な行路ばかりではありません。猛暑や寒さ、豪雨や砂塵に見舞われることさえあります。従ってサポートしてくれる有能クルーが必要で、クルーは事業における従業員さんに当たります。
 競技中の円滑な水や食料の補給、コース逸脱時またオーバーペースした時にもクルーが補正してくれます。そして休憩時の快適さも、ランナーとクルーの良好な関係により実現します。つまり従業員さんがいかに高いモチベーションを保ち事業運営に主体的参加してくれるかは、従業員エンゲージメントの成否にかかっているのです。

 さて沿道には観衆がいて、特定のランナーやクルーのファンになると、常にレースの応援に来てくれます。この応援団は、飲食店で言えば常連のお客さんです。
 片や装備などを提供してくれるのは、飲食店に例えれば出入りの業者さんです。
この応援団や業者さんは、経営姿勢や考え方に共感すれば、クルーになってくれる人さえ出てきます。私が経営していた店でも、お客さんや業者さんが就職してくれた事例が有りました。
 また大変有り難いことですが、現在の私共のクライアントさんには、かつてのお客さんや業者さんもいらっしゃいます。

 そしてもしランナーが怪我や体調不良に見舞われた場合、ランナーやクルーの手に余れば、いよいよスポーツドクターが呼ばれることになります。
外食産業ではこの医師が、飲食店ドクター、つまり飲食店の経営コンサルタントという訳です。

 ここで少し、私が敬愛して止まないある老練医師からの、受け売り話をさせていただきます。

『 理想的な医療 』に求められるものは、安全、正確、低侵襲( 患者の体に極力負担を掛けないこと )で、もし同じ治療結果が得られるならば、低コストであることも重要です。
 そのためには高い見識と豊富な経験を持つ医師が、患者の状態を隈なく注視しながら、十二分に話を聴くことが不可欠となります。何故ならば、AIや生検で特定できる癌などを除けば、いかに検査しても病気を特定できないケースが有るからです。しかも大きな可能性を期待されるAIでさえ、何故その病気にかかったのか? どうすれば予防できるのか? の答は導き出すことができません。業績不振の飲食店が経営指標の数字だけこね回しても、その原因や解決策が見付からないのと同じ理屈です。
 病気の特定と間違いの無い診断、そして最善の治療と予防には、総合的で正しい判断が欠かせないのです。
 
 例えば血栓を防ぐ為の抗凝固薬( 血液サラサラの薬 )は、飲む時間帯などの用法や用量を、誰にでも一律に処方することはありません。既往症・腎機能・体重・年齢・併用薬・職業やライフスタイルなど個々の患者の異なる事情を考慮しなければ、怪我による失血死や脳出血のリスクも避けられないからです。調理人などには、薬効が半日で半減するタイプの抗凝固薬も使用するそうです。包丁を使う仕事ですから、切り傷を考慮すれば当然です。
 私が心酔するこの先生は人への優しさが桁外れな上、薬剤師と医師のダブル免許までお持ちです。
そしてそのお人柄と智賢を武器に、様々な患者さん毎にきめ細かな診療をなさっておられます。

 翻って飲食店ドクターである飲食店コンサルタントにも、前述した『 理想的医師 』と同様の高度な見識、判断、配慮、そして手法が求められるべきです。
 
 それぞれのお店は成り立ちや営業形態が違うため、当然ながら目指すべき方向性も異なっています。
また従業員さんも、一人一人個性や能力が違います。従って研修やトレーニングでの接し方や物言いも個々に応じて変えなければ、効果を望むことはできません。そのため徹底した聴き取りと観察を行い、お店や従業員さんの特性や長所を知り尽くすことが、何より肝要となります。
そうすることで初めて、全ての強みの最大化と、全ての弱みの最小化とが実現できてゆくのです。
 そして最後は以上を武器に、経営者さん・従業員さん・私共が三人四脚で、常連のお客さんや収益を増やす手立てを形にしてゆきます。

 コンサルティングは良心的に、明瞭に、長期的視野に立って行われなくてはなりません。
経営者さんの為の費用対効果、また改革に因り起きるかも知れない従業員さん方の精神的・肉体的負担にも、正しい考察と木目細かな配慮ができなければ一人前のコンサルタントとは言えないからです。
 有能なコンサルタントが責任を全うして初めて、『 問題を解決すること 』、『 お店をより良い状態に引上げること 』、そして『 その状態を維持・発展させること 』の三つが全て叶うことになります。

 医療の理想は『 怪我や病気の治療 』に止まらず、『 予防と健康促進 』まで目指すものです。
飲食店ドクターも同様に、『 問題解決 』と並行して、『 エラー予防と健全経営促進 』を目指すべきと心得ます。

 私はこれまでに学び得たことを、世の中に全て還元したいと熱望しています。
また、より良いご提案ができるよう、更なる研究を怠りません。経営コンサルタントとしてはもちろん一人の人間としても、どなたかのお役に立つことを願っているからです。
 
 自分の仕事がどなたかの支えとなり、ひいてはどなたかの人生をより善いものにできるならば、これほど嬉しいことはありません。これこそ『 本懐 』というものです。
自分の仕事に対するこの使命感こそが、労をいとわない情熱の源泉です。

 私は誠心誠意、かつ知恵と智見の全てを投入して、『 愛される飲食店 』を目指す経営者さんに対し我が事の様にお手伝いをしてまいります。

 これが飲食店経営コンサルタント、『 飲食店ドクター 』としての私の仕事です。

~ 次回のコラムは競技会スタート前、つまり新規開業に至るまでの、飲食店ドクターの役割についてお話しさせていただきます。 ~

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